AWS入門ブログリレー2024〜VMware Cloud on AWS編〜
大家好,AWS事業本部の西野です。 当エントリは弊社AWS事業本部による『AWS 入門ブログリレー 2024』の11日目のエントリです。
このブログリレーの企画は、普段 AWS サービスについて最新のネタ・深い/細かいテーマを主に書き連ねてきたメンバーの手によって、 今一度初心に返って、基本的な部分を見つめ直してみよう、解説してみようというコンセプトが含まれています。
AWS をこれから学ぼう!という方にとっては文字通りの入門記事として、またすでに AWS を活用されている方にとっても AWS サービスの再発見や 2024 年のサービスアップデートのキャッチアップの場となればと考えておりますので、ぜひ最後までお付合い頂ければ幸いです。
では、さっそくいってみましょう。今回のテーマは『VMware Cloud on AWS』です。
※ 本ブログで執筆する内容はすべて2024年4月現在入手できる情報をベースにしています。
VMware Cloud on AWSとは
概要
(VMware Cloud on AWS を使用して VMware SDDC on AWS をデプロイする - AWS 規範ガイダンス より引用)
VMware Cloud on AWSはAWSとVMwareによって共同開発された VMware SDDC(Software-Defined Data Center)のマネージドサービス です。
VMware Cloud on AWSのSDDCは、AWSグローバルインフラストラクチャ上のEC2ベアメタルインスタンスとVMwareの仮想化ソリューションであるvSphere・vSAN・NSXとが組み合わされた状態でデプロイされます。
SDDCをデプロイすると、デプロイ時にあらかじめ指定したVPCのサブネット内に専用のENIが作成されます。SDDC上の仮想マシンはこのENIもしくは別途作成するVTGW(VMware Transit Connect / VMwareによって管理されるTransit Gateway)を経由してプライベートネットワークでネイティブAWSサービスにアクセスできます。
実際にネイティブAWSサービスとの連携を試してみた例として以下のブログがあります。
VMware Cloud on AWSからRDSへの接続を試してみた | DevelopersIO
(VMware Cloud on AWS の責任共有モデル - VMware Japan Blog より引用)
SDDC以下のレイヤーの運用(データセンター設備やマシンの手配、パッチ適用、バージョンアップ、障害対応など)はマネージドサービスとしてAWSとVMwareによってすべて提供されます。したがって、ユーザーはそれ以上のレイヤーの管理に集中できます。
ユースケース
VMware Cloud on AWSは、今日でも多くのオンプレミス環境で利用されている仮想化ソリューション群で構成されていながら、それでいてクラウドサービスであるという特徴を持っています。
事前準備が整ってさえいれば、専用のWebコンソールからデプロイを開始してからおよそ2時間程度で先述のSDDC環境が手に入ります。
AWSの公式ページに記載されている代表的なユースケースは以下の4つです。
- データセンターの拡張
- ディザスタリカバリソリューションの簡素化
- クラウドへの迅速な移行とスケール
- 次世代アプリケーションの構築
以下のページから実際のお客様事例にアクセスできるのであわせてご参照ください。
VMware Cloud on AWS(VMware 環境を AWS クラウドに移行および拡張)| AWS
対応リージョン
VMware Cloud on AWSは全24リージョンに対応しています。※AWS GovCloud(米国)を含めると26リージョン
リージョンによってはVMware Cloud on AWSを利用できないアベイラビリティーゾーンが存在することにご注意ください。なお、日本に存在するアジアパシフィック(東京)リージョンおよびアジアパシフィック(大阪)リージョンにおいては、新規で利用可能なすべてのアベイラビリティーゾーンでVMware Cloud on AWSを利用可能です。
VMware Cloud on AWSをサポートするAWSリージョン / アベイラビリティーゾーンの詳細については以下のドキュメントをご確認ください。
AWS Region and Availability Zone Support
サポート
VMwareによって単一の窓口が提供されています。リセラーなどのサードパーティーを経由することなくVMwareのサポートに直接問い合わせができ、高品質なサポートを受けられます。
サポートへの問い合わせ方法については以下のブログをご参照ください。
VMware Cloud on AWSについて何か困ったときに確認するサポートフロー | DevelopersIO
EC2ベアメタルインスタンス
VMware Cloud on AWSを構成するコンポーネントのうち最も重要なもののひとつがEC2ベアメタルインスタンスです。VMware Cloud on AWSのユーザーはAWSグローバルインフラストラクチャ上で稼働するEC2ベアメタルインスタンスをシングルテナントで専有できます。
本番環境用としては最低2台のEC2ベアメタルインスタンスを使用する必要があり、1クラスタあたり最大16ホストまで拡張可能です。1台のホストでSDDCを作成することもできるのですが、作成後30日間が経過すると自動的に削除されてしまうため、主に検証・PoCのために用いられます。
VMware Cloud on AWSで利用できるEC2ベアメタルインスタンスのタイプは以下の4つです。
インスタンスタイプ | i3.metal | i3en.metal | i4i.metal | m7i.metal |
---|---|---|---|---|
CPU タイプ | Intel Xeon E5-2686 (Broadwell) | Intel Xeon Cascade Lake | Intel Xeon Ice Lake | Intel Xeon Sapphire Rapids |
CPU コア数 | 36 Cores @ 2.3 GHz | 48 Cores @ 2.5GHz (96 HT Core) | 64 cores @ 3.5 Ghz (128 HT Core) | 48 Cores @ 3.2-3.8GHz (96 HT Core) |
メモリ | 512 GiB | 768 GiB | 1,024 GiB | 384 GiB |
ストレージ容量(Raw Capacity) | 10.7 TiB(NVMe SSD) | 45.8 TiB(NVMe SSD) | 20.5 TiB(Nitro SSD) | ディスクレス(外部ストレージを利用) |
上記インスタンスタイプのうち、m7i.metalは2024年にリリースされた新しいものです。 ディスクレスであるところがこのインスタンスの最大の特徴です。このインスタンスタイプでSDDCを利用するためにはFSx for NetApp ONTAPもしくはVMware Cloud Flex Storageを外部ストレージとして利用する必要があります。外部ストレージの容量次第では従来のインスタンスタイプに比して安価に利用できるので、従来はコスト的にフィットしなかった中小規模のシステムにも裾野が広がるのではと期待されています。ただし、本ブログ執筆時点では日本のアジアパシフィック(東京)リージョンおよびアジアパシフィック(大阪)リージョンではまだリリースされていません。
m7i.metalインスタンスについては以下のブログも合わせてご確認ください。
[アップデート] VMware Cloud on AWSに待望の新インスタンス”m7i.metal-24xl”が一般利用可能になりました | DevelopersIO
なお、i3.metalについてはサブスクリプション(後述)の販売が既に終了しており、将来的なEoS/EoLも発表されています。今後新規でVMware Cloud on AWSを利用する際は原則としてこのi3.metal以外で検討していくことになるでしょう。詳細については以下のブログをご覧ください。
サイジングと料金
VMware Cloud Sizer に既存環境で稼働している仮想マシンの情報(CPU・メモリ・ストレージのサイズ並びにそれらの使用率など)を入力するとVMware Cloud on AWSのサイジングを実行してくれます。最近のアップデートにより外部ストレージを含むサイジングが可能になったので、より正確な計画に役立ちます。
VMware Cloud on AWS サイジングの解説 - VMware Japan Blog
VMware Cloud Sizer で VMware Cloud on AWS の外部ストレージのサイジングもできるようになった! #vmware - Qiita
料金プランとしては1時間単位での課金がなされるオンデマンドと1年もしくは3年の長期契約をする「サブスクリプション」が存在します。サブスクリプションはAWSのリザーブドインスタンスのようなものと考えるとわかりやすいでしょう。また、サブスクリプションの支払いタイプとしては全額前払い・月額払いの2種類から選択可能です。
インスタンスタイプ / リージョン / 料金プラン / 支払いタイプごとの具体的な金額について、従来はWebサイト上で公開されていたのですが、現在はBroadcomのメールアドレス([email protected])に問い合わせて確認するよう変更されています。VMware Cloud on AWSのリセールが可能なパートナーからの情報提供も可能ですので、導入検討中のお客様はいずれかにお問い合わせください。※ クラスメソッドにお問い合わせいただけると私は嬉しいです。
学習方法
先述したとおりVMware Cloud on AWSは比較的スペックの高いEC2ベアメタルインスタンスを専有するサービスであるため、1台のホストでSDDCを作成した場合でもそれなりの費用が発生してしまいます。多くのネイティブAWSと同様の手軽さで試してみることは正直難しいです。
そんなときに便利なのがVMware Hands-on Labsです。その名の通りWebブラウザ上から各種VMware製品のハンズオンを実行できるWebサイトであり、VMware Cloud on AWS学習用のコースも用意されています。詳細については以下のブログをご参照ください。
VMware Cloud on AWSを体系的に学べるハンズオンラボを触ってみた | DevelopersIO
終わりに
以上、『AWS 入門ブログリレー 2024』の11日目のエントリ『VMware Cloud on AWS』編でした。
次回、4/5は弊社arapによる「Amazon Location Service編」の予定です!